最近、テレビでは日常茶飯事に健康食品のコマーシャルが流れています。
ところで、このような健康食品(サプリメント)は身体に良いという意味で医薬品と似たイメージがありますが、実はその性質も認定方法も医薬品とは全く異なります。
なぜなら健康食品(サプリメント)は薬事法上、「医薬品」という扱いにならないからです。また、サプリメントと医薬品の併用にも注意が必要です。
では、健康食品(サプリメント)は一体どのような扱いになり、どのような規制を受け、服用の際にどのような注意が必要なのでしょうか。
そこで、健康食品(サプリメント)と医薬品の違いや、薬事法上受ける規制内容の違い、さらには飲み合わせ・併用の際の注意点などについて考えてみましょう。
1.健康食品(サプリメント)と医薬品の違い
まずは、健康食品(サプリメント)と医薬品の違いを明らかにしておきましょう。
そもそも薬事法(現在、薬機法または医薬品医療機器法と呼ばれる)上、健康食品(サプリメント)と医薬品はどのような違いがあるのでしょうか。
健康食品(サプリメント)とは
では、まず健康食品(サプリメント)について見てみましょう。
健康食品やサプリメントとは、一体どのようなものなのでしょうか。
一般に、健康食品とは「健康の保持増進に資する食品全般」が、またサプリメントとは「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」がそれぞれ該当すると考えられています。しかし、明確な定義がないため一般の消費者が認識している健康食品やサプリメントは、通常の食材から、菓子や飲料、医薬品と類似した錠剤・カプセルまで極めて多岐にわたります。
多様な健康食品、とあるように、健康食品とサプリメントに明確な違いはありません。
栄養補助食品、健康補助食品、特定保健用食品なども健康食品やサプリメントと言えます。これらは毎日の食事だけでは不足しがちな栄養素を補うことを目的としたものであって、病気や症状の治療・予防を目的としたものではありません。
健康食品やサプリメントは人間の自己治癒力や免疫力を高めるといった、予防効果を目的とするものです。
含まれる成分内容も、人間が本来持っているものと同じ自然の成分であり、位置づけとしては、医薬品ではなく単なる食品となります。
医薬品とは
次に、医薬品とは何かを見てみましょう。
医薬品とは、病気の予防や治療を目的としたものであり、その名称や成分内容、効果効能や副作用、用法や用量、分量などについて、しっかりとその品質や有効性、安全性について調査が行われた結果、正式に厚生労働大臣や都道府県の知事から承認を受けたものです。
この「医薬品」には、人間が本来持っている自然の成分以外の成分が多く含まれています。そして、医薬品の中には、医師しか処方できない医療用医薬品と、処方箋までは不要で一般販売が可能な一般用医薬品があります。
ドラッグストアなどでみんなが購入している医薬品は、一般用医薬品になります。
さらに、薬事法上には「医薬部外品」と分類されるものもあります。この医薬部外品は、医薬品ほどは副作用等のリスクが高くなく、特定の症状の予防のみ(※治療ではない)を目的としたもので、その効用などについて厚生労働大臣や都道府県知事から承認を受けたもののことです。
2.薬事法から見る健康食品と医薬品の効果効能表現
次に、薬事法上健康食品(サプリメント)と医薬品は、それぞれどのような効果効能の表現が認められるのかを見てみましょう。
健康食品の効果効能表現
まずは、健康食品の効果効能表現について説明します。
健康食品といっても一般の食品は、具体的な効果を示すことはできません。
ただし、次の3つの食品であれば、効果を示すことができます。
それが①特定保健用食品、②栄養機能食品、さらに最近導入された③機能性表示食品です。それぞれ分けて説明します。
特定保健用食品(俗にいうトクホのことです)
まず、特定保健用食品はどのようなものでしょうか。これは、人間の身体の機能などに対し影響を与える成分を含んでいるもののことで、特定の効果があることが科学的に立証されており、なおかつ国によって安全性や効果の審査を受けた結果、消費者庁により許可を受けた食品のことです。
この特定保健用食品の場合は、許可された保健的な効果であれば、その効果効能として表示することができます。
認められているのは次の11パターンです。
①おなかの調子
②コレステロール高め
③血圧高め
④ミネラルの吸収を助ける
⑤骨の健康が気になる
⑥歯を丈夫に
⑦血糖値が気になる
⑧中性脂肪が気になる
⑨体脂肪が気になる
⑩便通改善
⑪肥満気味の方
薬事法上の薬として認定されているものではないため、医薬品としての効果があるかのような表示は認められません。たとえば「高血圧の改善に」とか「緑内障の治療に」などと言った表現は認められないので注意が必要です。
栄養機能食品
次に栄養機能食品についてです。これは、必要な栄養成分を食事だけでは十分に摂りきれない場合などに、足りない栄養成分の補給を主な目的として摂取する食品のことです。
栄養機能食品は特定保健用食品と違って消費者庁の認可を受けていません。
定められている栄養成分基準に適合していれば、それぞれの製造業者などの自己判断により、その栄養成分の表示ができるというものです。
その栄養機能についての表示は出来ますが、特定保健用食品とは違って特定の効果効能があるかのような表現はできません。
現在は、ミネラル5種類、ビタミン12種類について、規格基準が定められ、その成分の効果は示すことができます。例えば、カルシウムが基準値以上含まれる食品なら「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素」と表示できます。
現在、規格基準が定められている栄養成分
ミネラル類 カルシウム、亜鉛、銅、マグネシウム、鉄
ビタミン類 ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸
機能性表示食品
最後に、機能性表示食品です。これは、特定保健用食品でなくても、食品の含有成分やその成分の持つ機能などについて表示できる制度です。食品の安全性や機能性について、エビデンス(証拠)をそろえて、消費者庁に届け出ることによって利用できます。
効果効能表現としては、機能性が認められるものであれば身体の多くの部位についてその効果を表現することが可能であり「体のどこにいいのか」とか「どのように機能するのか」について表示することが可能です。たとえば、「本品は、メチル化カテキンを含んでいるので、花粉が気になる方の目や鼻の調子を整えます。」などといった表示が認められます。
単に栄養成分の持つ栄養機能のみの表示しか出来なかった栄養機能食品とは、この点で異なってきます。ただし、疾病の治療予防効果が認められるわけではないので、「花粉症の治療に役立ちます」といった表現はできないので注意が必要です。
3つの機能性食品の注意点
3つの健康食品類すべてについて、先にも述べたとおり、たとえ国から許可を受けた食品であっても薬事法上特定の疾病や症状の予防・効果が認められたものではないので、あたかも医薬品であるかのような効果や効能があるかのような表現をすることは認められないので注意が必要です。
医薬品と医薬部外品の効果効能表現
次に、医薬品や医薬部外品の効果効能表現について見てみましょう。
医薬品
医薬品は薬事法上特定の疾病や症状に対する予防や治療効果が認められているものです。
よって、医薬品については認定された疾病の予防や治療効果があることを記載することができます。たとえば「花粉症の改善に役立ちます」と表示することも可能です。
医薬部外品
医薬部外品についてはどうなっているのでしょうか。
この点、医薬部外品は、特定の症状についての予防効果のみが認定されているものですので、その認定された予防効果があることのみを表示することが認められており、疾病の治療効果があるとまでの表示は認められません。
例えば、脱毛の予防効果があるという認定を受けた医薬部外品であれば、「脱毛予防に効果があります」などの表示は認められますが「発毛促進」と記載することはできません。
3.健康食品(サプリメント)と医薬品の飲み合わせ・相互作用
以上、健康食品(サプリメント)を医薬品の違いについて見てきました。
これによると、健康食品(サプリメント)は薬品ではなく単なる食品に属するということなので、自由に服用できるということになりそうです。
実際に、身体に良いのではないかと考え、普段服用している医薬品と併用して、自己判断で健康食品(サプリメント)を服用している方もいらっしゃいます。
しかし、健康食品(サプリメント)は、その効果効用や副作用などについて、医薬品とは異なって十分に審査を受けているとは言えませんし、実は医薬品と相互作用があるものがあり、医薬品との飲み合わせや併用には注意が必要です。
サプリメントの成分によっては、医薬品と同時に摂取することによって、医薬品の吸収をさまたげたり、作用を弱めたりすることもありますし、逆に医薬品の作用を増強しすぎることもあります。たとえば、ビタミンAのサプリメントとある種の医薬品を併用した場合であっても、血液凝固作用が増大されすぎたりビタミンA過剰症に似た症状が出たり、頭痛が起こることなどがあります。
ビタミンCのサプリメントと利尿剤を併用すると、尿路結石が起こりやすくなることもあります。
このような飲み合わせ、併用についての個別の判断は個々では困難ですので、医薬品を服用している場合にはなるべく健康食品(サプリメント)は控えるようにした方が良いでしょう。
健康食品(サプリメント)と医薬品の違いとその効果効能や表示上の規制、注意事項について説明してきましたが、いかがでしたか。そもそも医薬品として薬事法上の認定・規制を受ける医薬品・医薬部外品と、単なる食品としての取り扱いになる健康食品(サプリメント)は、似ていても全く異なるものです。
認められる効果効能表現も全く異なりますので注意しましょう。
また、医薬品と健康食品(サプリメント)の併用には危険が伴いますのでなるべく避けるのが無難でしょう。
最近では、「機能性表示食品」制度が導入されたため、これを新たなビジネスチャンスとしてとらえる向きが多いです。
賢い健康食品との付き合い方 ~ 保健機能食品とは ~
健康食品市場は現在2兆円規模と言われ、消費者委員会が行ったアンケート調査でも実に6割の人が健康食品を利用していると回答しています。
このように社会に広く認知されている健康食品ですが、実は法令上の定義はありません。「健康食品」という名称は、単に「健康の保持増進に資する食品として販売利用される食品」を意味し、有効性や安全性をなんら担保するものではありません。特に有効性の面では、健康食品は効果・効能をうたうことが薬事法で禁止されているため、「効きそうなイメージ」や「利用者の個人的な感想」を喧伝しているのが現状です。
しかし、近年、生活習慣病の増加が問題になり、国民の健康の維持・増進のためには利用者が自ら選択するのに充分な情報を与えることが重要との考えから、食品に機能や用途表示ができる「保健機能食品」の制度が創設されました。この保健機能食品は国が制度化した「健康食品」とも呼べるものです。
1.保健機能食品の制度(栄養機能食品と特定保健用食品)
保健機能食品には栄養機能食品と特定保健用食品の区分があります。栄養機能食品は栄養成分の補給や補完を目的とした食品で、5種類のミネラルと12種類のビタミンについて規格基準を満たせば、許可や届出なしに栄養素の機能表示ができます。
一方、「特定保健用食品(通称、特保・トクホ)」は健康の維持増進や保健の用途に資することを目的とした食品で、安全性や有効性について科学的根拠を示して個別審査を受けて許可されると「血圧が高めの方に適する」、「食後の血糖値の上昇を緩やかにする」などの保健用途表示ができます。
このように保健機能食品(栄養機能食品と特定保健用食品)では、いわゆる健康食品を含む一般食品には認められていない機能表示が認められていますが、同時に使用に当っての注意喚起や摂取目安量の表示も義務付けられており、利用者はこの点を良く理解したうえで適切に利用する必要があります。
2.保健機能食品を利用するにあたって注意すべきこと
いわゆる健康食品を含めて「これさえ摂れば健康になれる」というようなものはありません。健康の基本は、適度な運動とバランスのとれた食事であり、保健機能食品はそれを補完するためのものです。栄養機能食品は普段の食事では不足しがちな栄養成分を補う目的で、特定保健用食品はバランスの良い食事を摂りつつ、健康上気になる点に応じて通常の食品と置き換えるのが良いでしょう。例えば、体脂肪が気になる方は、油の使用量を控えた上で、さらに普通の油を特保の油に切替えるのが有効です。保健機能食品は乱れた食生活の免罪符ではありません。
また保健機能食品は、栄養成分の機能や保健用途が表示されており、一定の効果を期待して良い食品ですが、たくさん摂れば良いというわけではありません。過剰摂取は逆に健康を損なうおそれがあり、摂取目安量を守ることが重要です。他の保健機能食品や健康食品との併用も避けた方が良いでしょう。それぞれの摂取目安量を守っていても同じ関与成分を含む製品をいくつも摂れば、結果として過剰摂取になります。また異なる関与成分でも作用機序が同じであれば効果が重なって過剰摂取と同じ結果を招くかもしれません。
保健機能食品は未病の方を対象とした健康の維持増進のための食品であり、病気を治す薬の代わりにはなりません。薬と同等の効果を期待して、保健機能食品だけに頼ると治療の機会を逸し、取り返しのつかない事態を招くかもしれません。
繰り返しになりますが、健康の基本は、適度な運動とバランスのとれた食事であり、保健機能食品はそれを補完するためのものなのです。
「トクホの大嘘」を週刊新潮が特集
2017年3月30日号(13号)と3月30日号(14号)の週刊新潮から「トクホの大嘘」として発売されています。3月30日号では、最も多く使われているトクホの成分である難消化性デキストリンについての特集です。この成分を含んだコーラやお茶のキャッチコピーは、「食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて、食後の中性脂肪の上昇をおだやかにする」というものです。しかし、実際の効き目は摂取量の1.2%の減少のみで、誤差範囲程度の微々たるものであることを解説しています。従って、これを信じて食事量が増えれば逆効果になります。
4月6日号(14号)の第2弾の記事では、黒○○茶が脂肪の吸収を抑えると有名な外人女性が宣伝していますが、上記と同様に効果は微々たるものであることを記載しています。 また、へ○○○緑茶の茶カテキンは「脂肪を代謝する力を高め、体脂肪を減らすのを助ける」とのキャッチコピーですが、摂取過多では肝機能障害の危険性があります。
トクホは、表向きは国が効果のある健康食品にお墨付きを与える制度ですが、実際は役人の天下り先を確保するための制度で、トクホを審査する機関と認定する機関の職員の殆どが天下り役人です。トクホの認定を受けるには1件につき約1億円の費用がかかりますが、これが天下り役人の給与となり、この1億円はトクホを信用して購入している消費者から回収しています。また、トクホを取得するには査読委員(審査委員)のいる医学雑誌に研究成果の論文を掲載する必要があるのですが、殆どのケースでは論文の提出者と査読委員がなれ合いになっている医学雑誌への投稿なのです。言い換えると、トクホの論文を掲載するために立ち上げたような医学雑誌への掲載なのです。従って、一流の医学雑誌には受け付けてもらえないような内容であってもOKなので、データの信用性は低い場合が多いのです。
健康食品のうち、本当に効果的な商品はほんの一握りであり、多くはプラセボ効果(思い込みによる効果)しかありませんので、よく吟味することが必要です。
健康は薬やトクホではなく、バランスの良い食事と適度な運動で作るべきです。
特定保健用食品のウソ
特定保健用食品とは、「食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする商品」とあり、2009年の売り上げは約5500億円になっています。特保商品は、国が安全や効果にお墨付きを与えたものなので安心と思っている方も多いでしょう。ところが、ここにも産学官の癒着が生んだウソが隠れているのです。
第一に、特保が認可されるためには安全性や効果が実証された医学データが必要です。 ところが、このデータにもピンキリがあるのです。名の通った医学雑誌に掲載された研究データなら、信用性が高いといえます。なぜなら、この様な雑誌に掲載されるには審査委員の厳しい審査を通過しなければならないからです。審査委員は、実験の妥当性はもちろん、文章の表現までチェックしますので、信ぴょう性のない内容では、受理されないのです。しかしながら、特保の実験データの多くは、特保申請に有利なデータを作る産学官癒着の研究所がおこなっているのです。そのデータをもとに、この研究所ゆかりの学会で発表して、自作自演の効果や安全性をアピールするのです。もちろん、研究所は官僚の天下り先であるのです。その研究所とは、公益財団法人「日本健康・栄養食品協会」で、全国の700以上の健康食品関連の会社が加入しています。この財団の専務理事は厚生労働省からの天下りポストになっています。さらに、特保の臨床試験を請け負う「総合医学研究所」は、特定保健用食品の臨床試験で経営が成り立っており、利害関係の強い学者の経営なのです。 原発事故のとき、安全神話を作り続けてきた御用学者たちのいい加減ぶりが明らかになりましたが、特保でも同じことが存在しています。
特定保健用食品のウソの最たるものは、特殊な実験条件です。本来、実験は一般のお客様の状況を反映した条件で行わなければならないのです。しかしながら、特定保健用食品の実験条件は極めて特殊な条件でのデータを用いていることがしばしばです。例えば、よく知られた商品ではエコナクッキングオイルがあります。健康効果として、肥満気味の方や中性脂肪が高めの方にお勧めとあったのですが、実際にラットやヒトで検証すると脂肪燃焼や中性脂肪燃焼への効果は認められていません。この理由は、メーカー側の実験条件では、調理に使用したものでなく直接飲ませたデータや、健康人ではなく糖尿病患者を用いたデータを使っていたためなのです。ですから、健常者では何の効果もないのですが、誰にでも効果があるような表現を用いていたのです。なお、発がん物質が含まれていたことは論外です。
他の例では、脂肪が燃焼するという高濃度茶カテキンの「ヘ●●●緑茶」です。この実験は肥満の強い人の場合に、多少の効果が期待できるものなのです。肥満でない通常の体型の人には効果がないことは、「男女ともに、BMIの低い人では体脂肪低減を認めず」と、論文の結論に書いてあるのです。しかしながら、テレビの宣伝では、通常体型の俳優にも効果があるように表現しています。なお、茶カテキンは過量摂取(600 mg/day)で肝障害などの健康被害を起こす恐れがあるので、アメリカでは摂取制限されている成分です。ヘ●●●緑茶350ml缶には540mgのカテキンが入っています。効果がないといって多量に摂取すると、逆に病気になる可能性がある特保であることを知ってください。
さらに最近の例では、特保のコーラの売れ行きが好調です。でも、本当にコーラを飲んで体脂肪が落ちて、ダイエットや健康に良いのでしょうか?CMは、ボクサーの矢吹ジョーがポテトチップス、ピザ、フライドチキンなどの高カロリー食品を食べているが、特保のコーラを飲めば脂肪の吸収が抑えられるので安心というものです。実際の実験では、マーガリンがびっしり入ったパンを摂取した場合に、脂肪の吸収が僅かに低減されている程度である。すなわち、過摂取の脂肪分の大部分は吸収されるので、コーラを飲んでもダイエットどころか肥満につながるのが実際です。この様な紛らわしい表現は、本来なら薬事法違反になるのですが、認可施設や実験施設のお偉いさんは厚労省の天下りなので、大手を振ってまかり通るのです。
この様に、特保の製品を買うと厚生省の天下り役人のフトコロが暖かくなる効果はありますが、一般消費者にはうたっているような効果は殆ど期待できません。
健康食品で健康被害(ウコン)
平成18年厚生労働省から「健康食品が原因と疑われる健康被害の報告例」が発表されました。近年、多様な方法で世界中から購入可能となった健康食品ですが、一部の商品を利用された方に健康被害が現れました。
健康食品とは、不足しがちなビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養補給を補助する食品で「サプリメント」とも呼ばれます。「天然の有効成分のみを抽出した自然食品」などと効能効果が宣伝されていますが、抽出されたことにより数倍~数百倍に及ぶ不自然な量が健康を害する原因になっています。その健康被害で多いのがウコンです。
ウコンは中国原産ショウガ科の植物で主に香辛料として用いられます。俗に「肝臓の機能を高める」といわれますが、日本で発生した健康食品による肝障害の原因の4分の1を占めるといわれます。
ウコンによる肝障害の原因成分については、2011年6月29日のNHKの「ためしてガッテン」が、ウコンに含まれる大量の鉄分が原因とする調査結果を紹介しています。健康な人なら問題はないが、肝炎にかかった人は鉄が肝臓にたまりやすく、その過剰な鉄が酸化促進作用で肝炎をさらに悪化させるのです。
他のウコンの肝障害の原因として、有効成分「クルクミン」が体内で酸化を抑える抗酸化物質として作用する一方で、鉄と同じように酸化促進作用も持つ両刃の剣との説もあるのです。また、アルコールによって誘発された肝障害が、クルクミンにより増悪するとの研究があります。日本で盛んに宣伝されている二日酔い防止や肝機能強化といった効果に対するまったく逆の作用指摘されているのです。
消化器系に関しても、食事中に含まれる通常量であれば安全とされていますが、過剰、長期の摂取で下痢や腹痛などを起こすことがあります。胃潰瘍、胆石症の方は利用してはいけません。
栄養は、バランスの良い食事で摂るべきで、不自然な形の加工物は要注意です。
消費者庁は、健康食品の水素水の販売会社のうたい文句に根拠がないとして、景品表示法違反で再発防止の措置命令を出しました。
水素水の3社の商品(ビガープライドEX、水素たっぷりのおいしい水、ナチュラ水素)ではダイエット効果や抗炎症作用など、医学的根拠がないにもかかわらずあたかもあるかのようなに表現をしていました。水素水関連は問題の多い商品が多くあり、マイナスイオン水やミネラル還元水素水などが、これまでにも公正取引委員会から排除命令を受けていた経緯があります。また水素水は、活性酸素と結合して無害な水にするとのうたい文句ですが、この反応が生体内で起こるという医学的根拠はありません。水素水の商品には水素自体を全く含まないものなども多いのが実態です。水素水は、水分補給としての摂取にはOKですが、がんの予防や改善などの効果は全く根拠がありませんので注意してください。
他にも、アスタキサンチンアイ&アイでは目の症状が改善する効果が根拠がないとして、同様に再発防止の措置命令を受けています。特定保健用食品(トクホ)でさえも、ダイエット効果をうたった500 ml の○○コーラ1本のカロリー低下作用は僅かに50 kcal 程度ですから、ご飯にすると茶碗に4分の1程度しかありません。これ以上余計に食べれば、ダイエットどころか肥満につながります。2年前から始まった機能性食品は、健康に良い成分が含まれていると表示できる制度ですが、その製品が実際に健康を維持・改善しているか否かに関係なく取得できる表示です。
健康食品を選ぶにあたっては、①テレビなどで宣伝していることと有効性は無関係。②医師、薬剤師や看護師などの医療職が健康相談の窓口を持っている販売会社は信用性が高い。③製品の安全性と有効性を研究して、その情報を公開しているものを選ぶ。などを参考にしてください。健康の基本は、バランスの食事と運動であり、健康食品はあくまでの補助として考えてください。
トクホ表示やうたい文句に騙されるな
ライオン株式会社の特定保健用食品(トクホ)の「トマト酢生活」は、“驚きの血圧低下作用”や“”薬に頼らず食生活で血圧対策”などの表示が著しくその効果を誤認させるとして、消費者庁から再発防止勧告を受けました。トクホで許されている表示は、「血圧が高めの人に適している」などであり、上記のような表示は禁止されています。
「トマト酢生活」の原材料のトマトと食酢は、どちらも健康には良い食物です。昔から、トマトが赤くなると医者が(仕事が無くなるので)青くなると言われています。トマトはGABA、グルタミン酸、カリウムなど、食酢も血管拡張作用が報告されているので、降圧効果が期待できます。しかながら、いずれの作用も穏やかであり、医薬品のような急激な改善効果は薄いと考えられます。従って、「血圧が高めの人に適している」といった表現が適切です。多くの消費者は、トクホの表示やうたい文句を信用して購入していますが、必ずしもその通りではありません。
トクホとは、表向きは健全な健康食品に対して政府がお墨付きを与えたものですが、現実はトクホの審査や認可機関の職員の殆どが天下り役人で、1件当たり約1億円の審査費用は天下り役人の収入源になっています。
従って、中小企業では1億円の壁のために良品でもトクホは取得できないので、必ずしもトクホの有無が製品の良・不良という訳ではありません。トクホを取得したメーカーは、審査費用の回収の為に多量の商品を販売したいので、如何にも効果がありそうなイメージで宣伝します。多くの消費者は、そのうたい文句にひかれて購入するのですが、殆ど効果のない商品や不当表示に近い商品も存在しています。従って、トクホという表示だけでなく、うたい文句通りの効果が有るのかも吟味する必要があります。
トクホを取得するには研究データが必要ですが、一般的には“1~2ヶ月間摂取すると、○○も低下しました。”というデータです。これには裏があります。先ず研究対象が、肥満のある人や、高脂血症、糖尿病などの患者を用いていることが多々あります。このようなケースでは、一般の消費者に同様の効果は期待できません。次に、○○低下しましたというデータです。1ヶ月や2か月で一時的に低下しても、それが長期で継続性があるかはわかりません。長期的な検討は費用も労力も必要なので、私の研究している漢方飲料の美露仙寿(めいるせんじゅ)のように、複数の医学論文に長期の検討結果を掲載している製品は、ほんの一握りだけです。信頼できるデータのある製品を選択してください。
トクホとは別の話題ですが、輸入健康食品の半数以上に副作用の危険性が高い医薬品が含まれているという厚生労働省の調査が公表されました。特に、「劇的に痩せる」や「精力増進」などのうたい文句は危険性が高いです。他には、エナジードリンクのカフェイン中毒での死亡例がありました。かっこ良い、可愛い、簡単に栄養が摂れるなどの理由で飲みすぎると、食品栄養のバランスを崩す可能性があり、健康食品で逆に健康を害してしまいます。健康を守るのは、バランスの良い食事と適度な運動です。健康食品で補うときは、安全性と効果をよく吟味して良い物を選びましょう。
しかしながら、一般の方にはどれ位の効果があるのか、危険性がないのかを判断するのは非常に困難です。そこで、健康食品を選ぶ最もわかり易いポイントを挙げてみます。それは、販売している会社に医療の国家資格(医師、看護師、薬剤師など)を有した常勤社員が、商品に対する質問や相談に対応しているかです。医療職の社員を雇用すると人件費がかさむので、利益第一主義の会社ではあり得ません。さらに、全く効果のない場合などは対応が煩わしくなるので、相談窓口を作ることはありません。相談窓口の直通の電話番号や住所などが明記されている会社は、製品の内容に自信があり、かつ信用第一の理念を持った企業なので、信用度は高いといえます。